バイトでマンションのエアコン室外機の清掃作業をしたときの思い出話
昔、学生の頃のことなんですが。
短期バイトで、赤坂にあるマンションのエアコン室外機の清掃の仕事に行ったときの話です。
10階くらいあるマンションを一部屋ずつ回って、ベランダにあるエアコンの室外機を掃除するんですが。
そのときに入った部屋の中で2つほど記憶に残る部屋があったんで、そのことについて書きます。
カレー風味の部屋
そこは、通路を行って一番奥の角部屋でした。
そのドアから10mほど手前のあたりで、既に匂いが漂ってきてたんですね。
スパイシーでエスニックな香り・・・そう、カレーの香りです。
いちおう食事時は避けてたんで昼食の頃合は過ぎてたんですが、その部屋に近づくにつれてカレーの匂いが強くなっていきました。
清掃会社の大将がピンポンを鳴らしてエアコン清掃に来た旨を伝えると、ドアが開きました。
開いたドアから顔をのぞかせたのは黒い顔をした、まさにインド人といった様子の人。
いゃどこの国の人かは分からないんですが、ドアの向こうからブワッと押し寄せるスパイシーな香りの中で、私にとってその人はインド人としか思えませんでした。
大将を先にして部屋に入るとその香りはさらに強くなって、まさに部屋一杯に“加齢臭”じゃなくて“カレー臭”が充満してまして。
嫌な臭いというわけではなく、むしろ美味しそうなくらいなんですが、カレー屋でもこんなにカレーの匂いで一杯の店は無いというくらいのスゴさなんですね。
そしてもっと驚いたのが、さほど広くもないその部屋の中に、同じようにインド人風の人が10人くらいいたことでして。
しかも2部屋あるもう1つのほうにも、ドアが閉まってて見えませんでしたが、さらに数人いるらしき声が聞こえます。
いわゆるタコ部屋といった印象で、2Kの部屋に10人以上のインド人風の人達が住んでる様子。
私たちは、充満するカレーの香りと何だか分からない言葉が飛び交う中、エアコンの室外機を掃除したという、まぁそれだけの話なんですが。
インド人風の人はたくさん集まって共同生活をするらしいということと、そうなると部屋がカレーの香りで一杯になるんだなと、そんな印象が残った部屋でした。
優しくて怖いオジサン達がいた部屋
もう1つの私が記憶に残ってる部屋は住居としてではなく、事務所として使われているようでした。
ドアを開けて応対したのは、頭を短く刈り上げたやや若くて派手な服の人でした。
大将と私が清掃道具を持って部屋に入ると、応接室風にソファーなどが並べられた部屋には、応対に出た若い人のほかにもう1人のアロハシャツの若い人。
そして、黒っぽいスーツのオジサンが2人いました。
オジサンの1人は中年で少しラフな感じの着こなし、そしてもう1人はやや年配でかっぷくが良く、ネクタイをしてパリッとした様子です。
私はその部屋に入って一瞬で分かったんですが、ここは怖いオジサン達が仕事場にしてる部屋のようで。
ネクタイの人がこの部屋で1番偉くて、次いでラフ中年が2番目、そして若い衆が2人という構成の様子。
私はこんな部屋からは一刻も早く出たいという一心で、通常より倍速の手際の良さで作業に集中しました。
そして掃除が終わって、これで開放されると思ったとき、ネクタイの人が声をかけてきました。
「ご苦労さん、なんか冷たいものでも飲んでいくか?」
私は薄笑いを浮かべながら、「イャいらないから!冷たいものも温かいものもいらないから!」という思いを込めた目で大将を見たんですが。
私の必死のテレパシーを感じもしない様子で大将は、
「そうですか?すみません、じゃーお言葉に甘えて」
とかニコニコしながら答えまして。
結局、ネクタイの人は若い衆に近所の喫茶店にアイスコーヒーの出前を注文させて、大将と私はすすめられてソファーに腰を下ろしました。
その後ネクタイの人に「学生さんか?」とかいろいろ聞かれて話をしたような気がするんですが、そこからはほとんど記憶がありません。
ただそのときラフ中年に電話がかかってきて、それに出たラフ中年が、
「ガキの使いじゃねーんだゴルァ!きっちり200万揃えて持って来りゃいーんだよ、クソガァ!!」
といきなり叫んだことだけは記憶に焼きついています。
私はそんな世界は映画やテレビドラマの中のフィクションだと思ってたんですが、意外と現実にこんなことってあるんだなと、とても印象に残りました。
おわりに
というわけで、特にどーということもないバイトのときの思い出話なんですが。
なんかチョット文章にしておきたくて、記事にしてみました。
私は、たくさん窓の並んだマンションを見るたびに思うんですよ。
これらたくさんの部屋の中に、いろいろなインド人風の人や怖いオジサン達がいるんだなって。
といったところで、今回はいじょ!